鹿紫雲一は、『呪術廻戦』の死滅回遊編で登場する受肉タイプの術師です。彼は作中でも屈指の実力者として描かれており、秤金次との戦いでは互角の戦いを繰り広げました。驚くべきことに、その戦いでは術式を使用せず、呪力操作のみで戦闘を行っていたのです。
しかし、そんな実力者である鹿紫雲ですら、最強とされる宿儺には敵わず、敗北を喫しました。本記事では、鹿紫雲の能力や強さ、そして彼がどのようにして敗北したのかについて詳しく解説していきます。鹿紫雲一についてもっと知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
鹿紫雲一(かしもはじめ)とは
鹿紫雲一は、呪術廻戦の死滅回遊編で初登場した受肉タイプの術師です。初登場は18巻158話で、電気コイルのような特徴的な髪型を持つ青年として描かれています。漫画では分かりにくいかもしれませんが、彼の髪は濃い水色です。
作中で「音量上げろ生前葬だ!」などのインパクトのあるセリフを残しており、敵キャラでありながらも非常に人気のあるキャラクターとなっています。
プロフィール詳細
鹿紫雲の性格を一言で表すなら、強者との戦いを生きがいとする戦闘狂です。彼は自身の圧倒的な強さを発揮できる場所を求めて、ひたすら強者との戦いを続けてきました。しかし、理性のない殺人鬼というわけではありません。
秤との約束を守り、五条と宿儺の戦いを見守るなど、理性的な一面も見せています。また、五条の戦いに割り込もうとする乙骨たちを「割って入るのは野暮」と諫めるなど、戦いに対する独自の哲学を持っていることがうかがえます。
意外かもしれませんが、鹿紫雲は強さゆえの孤独を抱えていました。強すぎるがゆえに、他者を慈しむことができなかったのです。その孤独を埋めるために、自分と渡り合える強者との戦いを求めていたのかもしれません。
受肉タイプの泳者
死滅回遊には、覚醒タイプと受肉タイプの2種類の泳者(プレイヤー)が存在します。覚醒タイプは、術式を使えるように脳の仕組みを作り変えられた術師です。鹿紫雲は受肉タイプの泳者に該当します。
受肉タイプの泳者とは、現代の人間を器として復活した過去の術師を指します。簡単に言えば、虎杖が呪物を取り込んで受肉した宿儺のような存在です。ただし、虎杖とは異なり、器となった者の人格は死亡してしまいます。
受肉の過程で器の自我を殺し、沈める必要があるためです。そのため、受肉タイプの泳者は、故意にせよ無意識にせよ、人を殺して受肉しています。例外として、来栖と天使のように、共存を果たした泳者も存在します。
正体は400年前の術師
受肉タイプの泳者である鹿紫雲の正体は、400年前の術師です。彼は江戸時代初期に活躍していた術師であり、羂索と出会ったときにはかなりの老齢で、何らかの病気を患っていました。吐血する姿が見られることからも、その病の深刻さがうかがえます。
しかし、鹿紫雲は病に侵されながらも、強者との戦いを求め続けていました。遠征が叶わなくなったため、彼は強者との戦いを求めて羂索と呪物化の契約を交わし、現代に復活する形で死滅回遊に参加しました。
目的は宿儺との戦い
鹿紫雲が受肉した目的は、宿儺との戦いにあります。羂索が知る限り、歴代最強の術師は宿儺です。それを聞いた鹿紫雲は、宿儺と戦うために死滅回遊への参加を決意しました。彼は第二の人生を強者との戦いに賭けたのです。
受肉後、鹿紫雲は宿儺を探し求め、泳者を次々と倒して200ポイントも獲得しています。術師1人を殺すたびに5ポイントが入るため、少なくとも40人以上を手にかけたことになります。彼の執念と孤独を埋めるための戦いへの渇望が伝わってきます。
鹿紫雲が強者に飢え、孤独を抱えていたことは明らかです。現代に受肉したのも、生前に満たされなかった孤独を埋めるためだったのでしょう。しかし、受肉の過程で器を殺していることは、決して許されることではありません。
鹿紫雲一の術式や能力
鹿紫雲一の戦闘スタイルは、特異な呪力特性を活かした肉弾戦が中心です。その希少な呪力特性と豊富な戦闘経験から、作中でもトップクラスの実力者として描かれています。特に初見の術式に対しても的確な判断を下せる点が、彼の強さを際立たせています。
ここでは、鹿紫雲一の能力と強さについて詳しく解説します。長らく謎だった術式の正体や、それを活かした多彩な技についても触れていますので、鹿紫雲の能力に興味がある方はぜひご覧ください。
呪力の特性
鹿紫雲の呪力は、電気と同じ特性を持っています。これは伏黒の式神・鵺と同じ特性です。通常の呪力攻撃は、呪力で防御することができますが、鹿紫雲の呪力特性はシンプルな呪力強化では防ぎきれません。
ただし、鹿紫雲と同等以上の呪力量や出力を持つ者であれば、その特性を無視できます。また、呪力を電荷分離してプラスの電荷を相手に纏わせ、稲妻の攻撃を放つことが可能で、この攻撃は電気の速度によりほぼ必中となります。
さらに、鹿紫雲は電気を用いた攻撃に対する耐性も持っており、非常に強力な呪力特性を誇ります。しかし、電気の特性上、電気が通りやすい環境では呪力が勝手に流出してしまうという弱点もあります。たとえば水中に入ると、呪力が空になるまで放出されてしまうのです。
彌虚葛籠
鹿紫雲は領域対策として、奥義・彌虚葛籠を使用することができます。彌虚葛籠は「シン・陰流 簡易領域」の元となった術であり、簡易的な結界を展開して相手の領域を中和し、必中効果を打ち消すことが可能です。
この術は主に宿儺やレジィといった過去の術師たちが領域対策として用いてきました。簡易領域との違いは明確にはされていませんが、おそらく持続時間にあると考えられます。簡易領域は一度展開すると領域が破られるまで効果が持続しますが、彌虚葛籠は掌印を結び続ける限り領域を展開し続けることが可能です。
作中では鹿紫雲が秤との戦いでこの技を使用しようとしましたが、秤の領域に付与された必中効果の発動が早かったため、使用を断念しています。
術式「幻獣琥珀」
鹿紫雲の術式は、原作第237話で明らかになりました。術式名は「幻獣琥珀」で、その効果は自身の体を作り変える能力です。この術式により、電気を利用した様々な現象を引き起こすことができ、鹿紫雲はまさに電気のエキスパートとなります。
この術式を解放した鹿紫雲は、電気を用いた音波、電磁波、X線など、様々な攻撃を行うことができます。呪力操作だけで戦う彼が、術式を解放することでさらに多様な攻撃手段を持つようになったのです。ただし、この強力な術式にはリスクも伴い、使用後に体が崩壊する可能性があります。そのため、人生で一度しか使えない大技として描かれています。
能力1:肉体を作り変える
鹿紫雲は術式を解放することで、肉体を作り変える能力を得ます。その結果、彼の見た目は人間とは言い難いものに変化します。「幻獣琥珀」という術式名にふさわしく、雷を纏った幻獣のような姿になります。
例えば、音波攻撃を行う際に口元が変化し、髪の部分が角のように変わるなど、体中から電気が放出される姿が描かれています。また、X線を使用する際には目が3つに増え、顔はほとんど原型を留めていません。術式を使用した鹿紫雲の姿は、まさに人間の域を超えた存在となります。
能力2:肉体の強化
鹿紫雲は電気を自在に操ることで、肉体も大幅に強化されます。特に脳内の電気信号を活性化させることで、敏捷性を向上させることが可能です。元々、彼は呪力操作による肉弾戦に優れた術師であり、術式を解放することでその強さにさらに磨きがかかっています。
その結果、防御が難しい呪力特性も相まって、特級術師でも手を焼く相手となります。宿儺との戦いでも、その肉弾戦能力で一時は宿儺を翻弄しましたが、完全に受肉を果たした宿儺には歯が立たず、敗北を喫しました。
能力3:電磁波を放つ
鹿紫雲は電気を利用して、対象を蒸発させる電磁波を放つことができます。作中で宿儺もこの攻撃を避けており、その威力はかなりのものと推測されます。電磁波によって物体が蒸発する現象は現実でも確認されており、電子レンジで卵を温めると爆発する現象と同じ原理です。
人間の体は7割が水分でできているため、電磁波によって水分が摩擦し、発熱して蒸発します。このような電磁波を利用した攻撃は、他のアニメ作品でも登場していますが、鹿紫雲はその応用力を持ち合わせた術師です。
能力4:音波攻撃
鹿紫雲は口を大きな円形のマスクに変化させ、強力な音波攻撃を放つことができます。物質の固有振動数に合わせて音波を放つことで、より高威力の攻撃を可能にします。宿儺との戦いでは、音波攻撃を駆使して拳による攻撃を通りやすくしていました。
鹿紫雲の音波攻撃は、肉弾戦と組み合わせることでさらに効果的な技となり、宿儺にとっても厄介な攻撃となりました。
能力5:X線による解析
鹿紫雲は第3の目を作り出すことで、X線を用いた解析が可能になります。もともと分析力に優れていた鹿紫雲にとって、この能力は非常に相性が良いものでした。作中では宿儺の体を分析し、その完璧さに感動する場面も見られました。
X線は波長が1ピコメートルから10ナノメートル程度の電磁波です。鹿紫雲の術式は様々な波長の電磁波を操ることができ、その緻密な呪力操作が可能にした能力と言えるでしょう。鹿紫雲は術式が一度きりのものであるため、徹底的に呪力操作を鍛え上げた結果、これらの難しい術式を使いこなすことができたのです。
過去の戦いから読み解く鹿紫雲一の強さ
ここでは、鹿紫雲一が作中で見せた戦いから、その強さを紐解いていきます。鹿紫雲は、作中で1勝2敗という結果を残していますが、これをもって彼が弱いと判断するのは早計です。むしろ、術式を使わないという自らに課したハンデにも関わらず、その圧倒的な戦闘力を見せつけてきました。特に「東京第2結界」での秤との戦いは、作中でも屈指の名勝負と称されています。
200ポイントを持つ泳者
鹿紫雲の初登場は第18巻158話で、200ポイントを持つ泳者として登場しました。死滅回游が始まってから短期間で、彼は約40人の術師を倒しています。しかし、彼にとってはあくまで宿儺を探す「ついで」に過ぎなかったようです。
鹿紫雲は「どいつもこいつも貧弱すぎる」と語り、さらに「400年前の方がマシだった」と言及しています。このことから、彼の時代である江戸時代の方が、術師としての質が高かったことが伺えます。その後、鹿紫雲は100ポイントを消費して、全泳者の情報を開示するルールを作成し、冷静かつ戦略的な一面を見せました。この行動が結果的に、虎杖たちの動きをサポートする形となりました。
死滅回游編「東京第2結界」
鹿紫雲の本格的な登場は、原作第21巻184話で描かれた「東京第2結界」の場面です。彼は宿儺を探して術師狩りを続けており、その実力を見せつけました。結界に到着したパンダは、周囲に漂う血の匂いに警戒感を募らせる中、鹿紫雲は呪力のオンオフを巧みに使い分け、ほとんど気配を感じさせませんでした。
パンダとの戦い
パンダとの戦いは、鹿紫雲にとって圧倒的に有利な展開となりました。彼はパンダを大きく凌駕するスピードとパワーを持っており、パンダの呪力量も鹿紫雲には遠く及びません。結果として、パンダは鹿紫雲の電撃を受け、ゴリラとサイの魂を失い、戦闘不能に追い込まれます。最後の瞬間に、秤が現れたことでパンダは命を取り留めました。
秤との戦い
秤との戦いは、鹿紫雲にとっても苛烈を極めるものでした。秤は領域展開によって4分11秒の間不死身となり、鹿紫雲にとって手強い相手となりました。しかし、鹿紫雲は「雑魚の思考」として、時間稼ぎをせずに正々堂々と戦い続けます。その中で、鹿紫雲は秤に幾度も致命傷を与えるなど、一進一退の攻防が繰り広げられました。最終的に、秤の豪運に敵わず敗北を喫するも、その後は宿儺との戦いを条件に協力関係を結びます。
人外魔境新宿決戦編
宿儺との戦いを条件に、高専側と協力関係を結んだ鹿紫雲は、律儀にその約束を守り続けます。五条と宿儺の戦いに割って入ることなく見守り続け、その間も強者故の孤独に対する理解を示します。彼は五条と宿儺の戦いを「五条のための戦い」として静観しつつも、強者としてのリスペクトを抱いていました。
宿儺との戦い
第236話で五条が宿儺に敗れた直後、鹿紫雲は待ち望んだ宿儺との戦いに挑みます。彼は最初から全力で術式を解放し、宿儺に挑みました。五条との戦いで疲弊していた宿儺を一時は翻弄しましたが、最終的に宿儺が真の姿を現すと、鹿紫雲も次第に劣勢に立たされます。そして、最後には宿儺の無数の斬撃を前に敗北を喫しました。
戦いの後、鹿紫雲と宿儺は精神世界で対話を交わします。宿儺は孤独を抱える鹿紫雲を「贅沢者」と称し、強者の弱者との関わり方について語りました。それを聞いた鹿紫雲の表情には、どこか満足気なものが感じられました。
鹿紫雲一は宿儺との戦いで死亡した?
鹿紫雲一は宿儺との戦いで命を落としましたが、その最期は非常に短く、あっけないものでした。待ち望んだ宿儺との決戦も、わずか2話ほどの展開で終わり、多くの読者が「本当に死亡したのか?」と疑問を抱いたほどです。
ここでは、鹿紫雲が確実に死亡した理由について解説します。この記事を読めば、鹿紫雲の死について納得できるでしょう。彼の死亡について疑問を持っている方は、ぜひ参考にしてください。
鹿紫雲一は漫画原作238話で死亡
鹿紫雲は原作238話で宿儺との戦いに敗れ、無数の斬撃によって切り刻まれました。その後、2人は精神世界で対話を交わします。そこで宿儺は、強者としての在り方について鹿紫雲に語りかけました。
宿儺は、「強者はその存在だけで愛されている」と言い、鹿紫雲が強者として全力で戦い続けたことこそが、強者の愛の形だと述べました。そして、そんな鹿紫雲が孤独を感じるのは贅沢だと指摘します。
鹿紫雲にとって、この言葉こそが400年後に受肉してまで求めていた答えだったのでしょう。最期はあっさりしていましたが、彼は満足してその生涯を終えたと言えます。
生存していても術式によって死に至る可能性
仮に宿儺の斬撃で命を落としていなかったとしても、鹿紫雲は最終的に死に至ったでしょう。その理由は、彼の術式にあります。鹿紫雲の術式は使用後に必ず肉体が崩壊するというリスクを伴っており、宿儺との戦いに勝とうが負けようが、彼の死は避けられなかったのです。
鹿紫雲は命を賭けて宿儺に挑みましたが、その死に対する躊躇はなかったと思われます。初めて術式を解放してまで戦う価値のある強敵と出会えたことで、彼は満足してその人生を全うしたと言えるでしょう。また、宿儺から強者としての愛を示されたことも、彼にとっては大きな意味がありました。400年もの時を超えて受肉し、強者との戦いを求め続けた鹿紫雲にとって、これ以上の死に様はなかったのではないでしょうか。
まとめ
鹿紫雲一というキャラクターを通して、作者は強者としての責任や孤立感を描いています。鹿紫雲は圧倒的な強さを持ちながら、その強さゆえに他者との深い繋がりを持つことができず、孤独を抱えていました。しかし、その孤独は単なる寂しさではなく、強さが生む矛盾や葛藤の象徴でもありました。
宿儺との対話を通じて、強者としての愛とは何か、またその愛がどのように表現されるべきかが語られます。強者は強さを持つがゆえに、人々から挑まれ、その挑戦に応えることで初めて愛を示すことができる。宿儺は鹿紫雲にこの真実を伝え、彼の孤独を「贅沢だ」と指摘することで、強さと孤独の関係を再定義しています。
このテーマは、強さが単なる物理的な力ではなく、それに伴う責任や他者との関係性の中で真に発揮されるものであるというメッセージを込めています。強さとは単に勝ち続けることではなく、他者と向き合い、その中で自己を確立していくプロセスでもあると作者は伝えたかったのではないでしょうか。
鹿紫雲の最期は、彼がようやく自分の探し求めていた答えにたどり着き、強者としての存在意義を全うした瞬間です。強さを持つ者が最後に求めるものは、孤独の中にある自己の価値ではなく、他者との関わりの中で得られる真実の自己認識であることを、作者は読者に示唆しているのだと思います。